2023年 第70回日本生態学会大会(仙台)植物生理生態シンポジウムのお知らせ

シンポジウム S09   2023年3月20日9:00-12:00 Room D

光の波長と植物の応答: 光合成から形態形成まで
How does light quality influence photosynthesis and carbon allocation of plants?

https://esj.ne.jp/meeting/abst/70/S09.html

 

地球には太陽からさまざまな波長の光が降り注ぐ。光合成を行う植物が資源として利用するのは可視光で、波長の短い青色光から長い赤色光までが含まれる。これらよりも波長の長い遠赤色光は、光合成の資源としては使われないが、光合成効率の調節などに作用する。さらに赤色光と遠赤色光といった波長の異なる光どうしの比率は時期や空間により変化するため、季節や被陰など植物の置かれた環境を感知するシグナルとして利用され、植物体内の炭素分配に影響する。
 異なる光の波長に対する植物の応答は、室内環境を変化させることで実験的に明らかにされてきた。野外環境においても作物や果樹を対象とした研究が進んでいるものの、森林の上層から下層にかけた階層構造などにより光環境が複雑となる環境下においては未だ実証されていないことも多い。また光合成能の測定には、可視光のみの人工光源を主に使用するが、遠赤色光を含まないことに由る影響も気になるところである。このように、それぞれの波長域あるいは波長どうしの比率が植物に与える影響を知ることは、植物の生理的機能が形態形成に作用するまでの過程を理解するために重要であると考え、本シンポジウムを企画した。
 光の波長に対する植物の応答について広く理解することを目指し、異なる視点から6名の方にご講演いただく。藻類や藍藻から草本や樹木までを対象とする本シンポジウムを通して、光の波長と植物の応答に纏わる奥深さに触れ、体系的に理解したうえで、生態学的な今後の展開や応用についてぜひ議論したい。

 

趣旨説明:企画者
講演1:藍川晋平(国際農研)ほか「光質・光量が藍藻・微細藻の光合成におよぼす影響」
講演2:寺島一郎(東京大学)「緑葉の光利用と光化学系IIの光阻害」
講演3:河野優(東京大学)ほか「光強度が頻繁に変化する光環境下での光合成応答に果たす遠赤色光の役割」

講演4:小口理一(大阪公立大学)「植物をとりまく光の質と量の勾配の影響 」
講演5:渋谷俊夫(大阪公立大学)「植物生産における光環境応答とトレードオフ
講演6:隅田明洋(京都府立大学)「森林における樹形の形成要因としての光質の研究展望」

総合討論:参加者全員

 

企画メンバー
東 若菜 (神戸大学)、上原 歩 (玉川大学)、梶野浩史(東北大学)、河合 清定 (国際農研)、才木 真太朗 (森林総合研究所 )、田邊智子(京都大学)、丸山海音(奈良教育大学